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題詠100首2007

先輩たちの真似をして、100首を並べてみます。
読んだ方はきっと勇気が出ると思います。
こんなんでもいいんだ・・・という黒い勇気が。

001:始
始末書の代筆くらいいくらでも 道踏み外すあなたが見たい

002:晴
さわやかに水を差します快晴の空を横切る飛行機雲は

003:屋根
真っすぐに私の胸に飛んでくるあなたの鳩を待つ屋根の上

004:限
切らなくちゃ時限装置はどこにある猫のおなかは涙をはじく

005:しあわせ
傷つくの嫌だし一人楽しいしあわせ鏡の国へようこそ

006:使
運び屋は何も知らない使用済み切手の缶に眠る鳥たち

007:スプーン
嘘つきの汗ばんだ手に黒色のスプーン私は眼鏡が欲しい

008:種
知らなくていいことだから知りたくて種子島からロケットは飛ぶ

009:週末
永遠に週末は晴れ三くだり半私が私の運命の人

010:握
さようなら紺色の君差し出せばよかった別れの握手は左

011:すきま
怖くない 弱気と強気とのすきま埋めるフォントが私にはある

012:赤
スプレーの赤い粒子が真夜中に参上見参する高架下

013:スポーツ
知るすべがない潔さ晴れ晴れとスポーツ紙しかない月曜日

014:温
くぐもった抗議の声は腕の中猫の形の温度をいだく

015:一緒
一緒には死ねない獣 骨になる前の頭と背中としっぽ

016:吹
蛇を呼べ 火照る心にひんやりと独りの夜は口笛吹いて

017:玉ねぎ
素のままで愛して 水にさらしたら玉ねぎだってサラダになれる

018:酸
酸化した記憶の密室一瞬であの世へ行ける大きく息を

019:男
あれが毒?私は息をしただけよやさしい男泣かせてばかり

020:メトロ
安息を罪と感じる蟻たちのメトロノームはいつもアレグロ

021:競
悲壮感出さない美学抜け駆けろおどけた名前持つ競走馬

022:記号
呼び覚ます私の中にある低音ヘ音記号は胎児の形

023:誰
不器用な愛の告白(でも誰が?)厳かに咲く思われにきび

024:バランス
ジンクスは自分で作る興の字のバランス決まれば今日はいいこと

025:化
化けること知らない瞳真っすぐに私を射抜くまぶたは一重

026:地図
かしこくて分かりやすくてかわいくて地図記号なら針葉樹林

027:給
贈賄と収賄それに口止め料 給食食べて大人になった

028:カーテン
どろどろに実は汚れている布も光と風を抱けばカーテン

029:国
生きてゆくすべでもふるさとの言葉手放す売国奴にはなれず

030:いたずら
ばれていたずらかる僕ら負けたふりするには瞳輝きすぎて

031:雪
完璧なハッピー一度くらいなら割れるくす玉舞う紙吹雪

032:ニュース
本当は殴り書きたい好きだって臨時ニュースの原稿みたく

033:太陽
気晴らしに太陽系の大きさと比べてみても告白は無理

034:配
ずれた帯直してあげる休配日ごめんねいつもやさしくなくて

035:昭和
真実はきっと私を傷つける昭和末期に君は生まれた

036:湯
妄想を培養させる力持つ給湯室は最後の砦

037:片思い
節度ある交際つまり片思い校則のない年になっても

038:穴
出会いたい私のことだけ大好きな節穴の目を持つ王子様

039:理想
現実と確率は無視 占いは「理想が高くても◎(にじゅうまる)」

040:ボタン
待っている開くボタンを長押しであなたはきっとここに来るから

041:障
いいことは続かないでも今だけは万障繰り合わせて恋して

042:海
魂の古い記憶か海鳴りの遠く聞こえて金縛り 来る

043:ためいき
ためいきの中にも酸素あきらめたふりで神様やりすごせたら

044:寺
寺なのか神社なのかも分からずに目眩がするほど君のことだけ

045:トマト
薄皮を剥かれたトマト温度差で迫れ核心私のことも

046:階段
エレベーター使わないってほんとかな横縞の人待つ階段室

047:没
授業中没収されたお手紙の中の秘密の微熱の行方

048:毛糸
告白はうまくいかない臆病な羊がくれた毛糸で編んでも

049:約
破棄されて解き放たれる薬指次の約束かわすときまで

050:仮面
さらけ出すことだけがすべてじゃなくて明智君にも見抜けぬ仮面

051:宙
落ち込んでいるのは分かる猫だけど月面宙返り(ムーンサルト)をするから見てて

052:あこがれ
何もかも日常になるあこがれたナ行とマ行で喋る相棒

053:爪
血の出ない熱を持つ傷深々と肉にめりこむ三日月の爪

054:電車
もしかして君は私を 真実は電車とホームの隙間に眠る

055:労
法則が欲しいあなたに会える日の待ち伏せさえも徒労ではなく

056:タオル
やさしさはやわらかさじゃないそっけない顔ですべてを吸う古タオル

057:空気
時間切れもう君の名は呼ばないよ空気鉄砲空まで届け

058:鐘
警鐘もBGMにこのシミはあの日あの時あの紫外線

059:ひらがな
カタカナで呼んでほしいと言ったのにあなたは「ふみを」いつもひらがな

060:キス
ホチキスでとめちゃっていい?しばらくは君を忘れてあげないつもり

061:論
例外になればよろしいあまたある記憶の理論飛び越えよ君

062:乾杯
乾杯のグラスは遠くかち合わず今宵どこかで打ち上がる君

063:浜
平均と比較されつつ行く浜辺私が好きなら言わないせりふ

064:ピアノ
泣いたことばれないように自転車はゆっくり蛇行ピアノの帰り

065:大阪
刻まれる君の歴史に大阪のときの彼女は変わった人と

066:切
切り札は好きの二文字通すべき筋はもれなく私にもある

067:夕立
なけなしの勇気無音に吸い取られビルの廊下に夕立よ降れ

068:杉
駆け回る縄文杉に会うために買ったシューズで書棚の森を

069:卒業
明日からはここにいません言い出せず卒業式はただの月曜

070:神
五百日以上続いた曇天に薄日が差して 神様はいる

071:鉄
愛される喜び長続きはせず棒磁石から離れぬ砂鉄

072:リモコン
逃げ出そう首をかしげて神様がリモコン振っているすきを見て

073:像
幻滅をさせてあなたを知りたいわきれいな偶像なんていらない

074:英語
筆記体踊る英語のノートには甘えたカーブで君の名前を

075:鳥
鳥かごの鍵は中からかけられて傷つくことを恐れる翼

076:まぶた
今だけは私を映す眼球を守るあなたのやさしいまぶた

077:写真
一枚の写真も残さず駆け抜けて海馬の中で息づくあなた

078:経
少し前まではなかった未来図にあなた経由でたどり着く町

079:塔
その昔卒塔婆をなぎ倒しながら叫んだ君の歌声甘く

080:富士
富士川を渡る車掌のやさしさで教えてあげる今日は新月

081:露
願わくは暴露されたい神の手で鍵も伏せ字もない日記帳

082:サイレン
正直な無意識夢はサイレントあなたの声を知らない私

083:筒
時間差で君が抱き取る封筒の上で寄り添う二人の指紋

084:退屈
週末は退屈の刑金曜のまなざし淡くかすんで消えて

085:きざし
海溝の暮らしも長く回復のきざしは遠い空のさざめき

086:石
何度でも石になりたい睨まれて不器用なのはあなたも同じ

087:テープ
会いに来て私は毎日新しいテープカットのはさみをあげる

088:暗
君が今抱いているのはうっすらと肉をまとった私の暗闇

089:こころ
一度だけ目尻に散った笑いじわ君のこころにふれた指先

090:質問
結び目を作る質問出つくして今日の私は会釈だけです

091:命
何だってするのに君の命令の待ち人数はたぶん二ケタ

092:ホテル
ふれられてやがてほどける言葉たち眠り続けるホテルの聖書

093:祝
何よりの言祝ぎ君の吃音がさんづけで呼ぶ私の苗字

094:社会
そんな目でお客を見ては 社会性乏しい君のまなざしが好き

095:裏
さよならの涙の質量変えるため目を閉じて待つ裏の攻撃

096:模様
今朝もいた十枚右に君がいた市松模様のタイルを歩く

097:話
君だけが気づいていない事務的な会話に乱れ飛ぶ音符たち

098:ベッド
誰とでもいいから寝息たてていて猫もベッドでとぐろ巻く四時

099:茶
もう行くの やっと出会ったとこなのにお茶の葉もまだ開かないのに

100:終
永遠の終わりが今だどこまでも続く線路に私はいない
# by egakimachi_fumiwo | 2007-10-29 22:44 | 短歌

完走報告(描町フ三ヲ)

なんとか完走することができました。
いまだに指を折らないと歌が作れない初心者ですが、まぎれもなく自分の作品が100首できたことがとてもうれしいです。
素敵な場を作って下さった五十嵐さんに心から感謝いたします。
どうもありがとうございました。
# by egakimachi_fumiwo | 2007-10-29 20:32 | 日記

100:終(描町フ三ヲ)

永遠の終わりが今だどこまでも続く線路に私はいない
# by egakimachi_fumiwo | 2007-10-29 20:19 | 短歌

099:茶(描町フ三ヲ)

もう行くの やっと出会ったとこなのにお茶の葉もまだ開かないのに
# by egakimachi_fumiwo | 2007-10-29 20:18 | 短歌

098:ベッド(描町フ三ヲ)

誰とでもいいから寝息たてていて猫もベッドでとぐろ巻く四時
# by egakimachi_fumiwo | 2007-10-29 20:17 | 短歌